サッカーって、小さい頃からやっていないと上手くなれないと思っていませんか?
確かに、幼稚園や小学校からクラブに通っている子たちは、経験も技術も豊富です。
でも、それって本当に“すべて”でしょうか?
これは、中学校からサッカーを始めたある少年の物語。
「下手くそって言われるのが怖かった」
中学1年の春。
クラスメイトが「部活どうする?」と話している中、彼はひとり悩んでいました。
小さい頃からサッカーが好き。でも、やったことなんてない。
ボールを蹴った回数なんて、数えるほどしかない。
「今さら始めたって、笑われるだけじゃないか…」
そう思って、最初は見学だけにしていた。
でも、その日の夜、彼は母親にこう漏らしました。
「本当は、サッカー部に入りたいんだ」
「毎日ボールに触る」と決めたあの日から
入部して最初の練習。
周りの先輩たちはもちろん、同級生ですらドリブルやパスが自然にできている。
自分だけ、何もできない。
パスをもらっても、すぐにミス。
ドリブルしようとして、すぐに取られる。
「邪魔だよ」なんて言葉を背中で受けながら、悔しさで唇を噛んだ。
でも、その日から、彼は毎日ボールに触れると決めた。
家に帰って、夕飯の前に公園で壁打ち。
夜はYouTubeでドリブル動画を研究。
休日は朝からひとりで自主練。誰も見ていないグラウンドで、黙々とボールを追いかけた。
「ひとつだけでいい、勝てる武器を作るんだ」
転機は、監督のひと言だった。
「全部を完璧にしようとするな。まずはひとつ、誰にも負けない武器を作れ」
彼は考えた。そして選んだのは、ドリブル。
「足元の技術なら、努力で差を埋められる気がしたんです」
それから彼は“ドリブルだけ”に全力を注いだ。
基礎のボールタッチ。コーンを並べたドリブル。1対1の練習。
時間をかけて、自信を持てる武器に変えていった。
「あいつ、ちょっと変わったよな」
2年生になった春。
あの日、自分を笑った同級生がこう言った。
「あいつ、なんかドリブル上手くなったよな」
試合でも1人、2人と抜く場面が増えてきた。
プレーが認められ、レギュラーにも選ばれるようになった。
でも、誰よりも自分が驚いていた。
「続けていれば、変われるんだ」
何度も心が折れそうになって、それでも踏ん張ったからこそ見えた景色だった。
そして最後の大会へ
中学最後の大会。
彼は左ウィングとしてピッチに立った。
試合終盤、1点を追う状況。
サイドでボールを受けた彼は、目の前のディフェンスを1人、2人と抜き、ゴール前にパスを送る。
それが決勝点に繋がった。
試合後、涙が止まらなかった。
「やってきてよかった」
心の底から、そう思えた瞬間だった。
「いつ始めたっていい。大事なのは心だ」
中学から始めたからこそ、遠回りもしたし、悔しい思いもたくさんした。
でも、彼は証明してくれた。
いつから始めたって遅くない。
本気で「上手くなりたい」と願う気持ちがあれば、変われる。
サッカーを始めたばかりの君へ。
「才能がない」なんて言葉に惑わされるな。
夢を諦める理由は、どこにもない。